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タイム・ラグ、つまり時差に悩まされている。松井秀喜の入団会見である。ニューヨーク時間1月14日正午に行われるという。日本時間に直すと15日未明、午前2時にあたる。通常の新聞印刷なら、ほぼ刷り終わりの時間である。遠隔地域への新聞は原稿の締め切り時間が早く、もちろん発送を終えている。松井の入団会見を掲載した新聞が町中に出回るのは、締め切り時間を繰り下げて対応した首都圏の限られた地域のみ、ということになる。 「それにしても」 と、ベテラン記者が呟いた。 「こいつは日本に対する嫌がらせかもしれないなぁ」 なるほど、大リーグの入団会見は新聞報道でよく見かけるが、昼日中、正午に行うなどあまり聞いたことがない。大リーグ関係者が日本との時差を知らないはずもないし、首を傾げたくもなる。日本の朝刊紙の締め切り時間を考慮してくれれば、あと2時間(現地午前10時)会見を早めてくれれば、日米新聞業界は丸く収まる。少なくとも日本の新聞が松井の入団を書き立てることはヤンキースにとって、十分なメリットがありそうなものだが。 「それがヤンキース、ニューヨークなのかもしれんな」 米国の中心は東海岸である。野球も同じで東海岸の球団が歴史も認識も深い。同じ日本人ヒーローが入団するにせよ、西海岸のシアトル、イチローのマリナーズとはおもねるにも勝手が違うぜ、とでも言いたげだ。松井がヤンキースにこだわったのも、後発の日本人大リーガーとしての面子(めんつ)とも言えるし、近鉄中村の入団交渉トラブルが今回の対応に微妙な影を落としているのかもしれない、とは事情通の分析である。 マイノリティ(少数民族)に対する米国の関心は高い。しかし、その半面、WASP(白人、アングロサクソン、プロテスタント)に代表されるような、白人至上主義が根強いのも偽らざる現実である。 「松井も苦労するぜ」 野球担当デスクが窓の外に広がる、真っ暗な街なみを見やった。 |