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このオフは「裏切り者」という言葉を二度聞いた。最初は2002年11月1日。FA宣言をした松井秀喜からである。「何を言っても裏切り者と言われるかもしれないが、いつか松井は行ってよかったと思われるように頑張るしかない」。 もうひとつは12月22日、中村紀洋からドタキャンを食った大リーグ・メッツ関係者の口からだった。「日本に対する"裏切り者"のイメージはパールハーバー以来だ」。と手厳しい。こういう引用はいかにもアメリカ的である。 松井秀喜、28歳。中村紀洋、29歳。ほぼ同年代の二人だが、選んだ進路は「洋の東西」に分かれた。どちらも「悩みに悩んだ」末の結論であり、とやかく言うつもりはない。夢の「棲み家」が違っただけだろう。ただ、個人的な感想を言わせてもらえば、中村の場合はいかにも浪花節的であり、涙の説得がモノを言うあたり「番頭さんと丁稚ドン」的な大阪風土が印象に残った。松井とて東京のチーム出身とはいえ、生まれは石川県。氏より育ちか。同じ西日本エリアの人種だけに、文化人類学、東西文化論的な考証も必要だろうか。 それより驚いたのは川島コミッショナーのコメントである。中村の近鉄残留が決まるとこんな発言をしている。「熟慮した末の中村君の決断と勇気に対して敬意を表したい。パリーグはもとより、日本のプロ野球にとっても大変喜ばしい」。 ここまで引用してきて厭になってきた。この人はなぜ日本を代表するバッターが大リーグに魅了されたのか、その過程がまるで分かっていない。選手たちはすでに海の向こうに魅力的な野球があることに気がついている。巨人中心主義の国内野球に見切りをつけ、空洞化が目前に迫っているのに、無能な、そして自己中心主義のオーナーたちの言い分にだけ耳を傾け、ファンが望む交流試合ですら実現できないでいる。日本シリーズの0勝4敗、パリーグの厳然たる衰頽も、目に入らないらしい。 自分の国の野球すら安泰ならば良いというのなら頑迷な「鎖国論」でしかない。球界の最高権力者として、さっさと行動で態度を示すがいい。真の「裏切り者」が誰であるか、ファンは気付いている。 |