「この情報、どう処理しましょうか」

 1週間ほど前、担当記者が困惑した表情で尋ねてきた。「そんなもん、公序良俗に反してもいるわけでもなし、放っておけ」。それでおしまいにした。今秋のドラフト会議の有力候補選手が若気の至りで(かどうか分からないが)、つまらぬトラブルを起こした。嗅ぎつけた週刊誌が匿名ながら大きく書いたし、一部夕刊紙も尻馬に乗ったからご存じの方もいるかもしれない。「ただし、(この選手の)獲得を目指している球団が反応したら、その事実だけを書きなさい」と現場記者には伝えておいた。

 案の定、球団は拒絶反応を起こし、ドラフト指名を見送るという。周囲の目を気にした結果だろう。当該選手は雲隠れし、かすかに伝わってくる話では「もう、死にたいくらい」と漏らした、という。ばかばかしい騒動だが、大人たちは世間体を気にして、笑って許してはくれない。監督なりが「そんな事、時がたてば笑い話さ」と吹き飛ばしてくれれば有り難いのだが、そんな余裕もないらしい。

 結局、記事は紙面に載った。淡々と事実関係を追いかけただけのもので「なぜ指名回避?」という読者の疑問に答えられない内容になった。

 「性格のいい奴で、実力も十分なんですがね。つまらん遊び心がとんでもない結果になった」と現場記者は愚痴った。「そんな世間体に振り回されるのなら、メジャー(大リーグ)を目指せばいい。そうですよね。150キロのストレートがあるんだから」と畳みかけてくる。

 「メジャー?、ねぇ…」

 目先だけの解決策を探るならば、そんなところだろうか。

 「巨人松井 メジャー決断」――そんな大見出しが出回った11月1日の、野球デスク席周辺の会話である。