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「大きくなったら何になりたい?」。子供の頃、学校の先生あたりに将来の夢を聞かれた方も多かろう。ずいぶん昔の話だが「電車の運転手」というのは結構支持された。 通勤途中、ホームに進入してくる電車の運転手を眺めている。同い年くらいの運転手を見つけると、「この人は小さい時の夢を実現したのだろうなぁ」と勝手に想像するが、存外に彼らの表情はぶ然としたもので、運転席でしきりに指さし確認を繰り返している。もっとも薄笑いを浮かべた運転手の電車に乗りたいとは思わないが…。 「夢」とは「現実」との折半で成り立つもので、夢の成分ばかりが際だつと、世の中、なかなか生きにくい。特に職業とはそういうものだろう。まぁ、凡人の人生に限っての話だが。 巨人松井がFA権を獲得した。「『おれは行くんだ』っていう気持ちでメジャーに行っちゃう人もいるけど、おれはそういうタイプではないから。いろんな人に迷惑がかからないよう、出来る限り早い段階で決断できればいいと思う」とは会見での言葉である。プロ野球選手になることは小学生時代からの「夢」だった。それが果たされた今、メジャーというもう一つの夢が膨らんできた。松井はメジャーに行くと思う。 もちろん、渡辺オーナーは「米国は怪我をしたらすぐに蹴飛ばすが、巨人は大選手にはそういうことはしないんだ」と引き留めに必死だ。ただし、それが松井の抜けた後の巨人の興業収益という「現実」を天秤にかけたものならば、松井の「夢」は入り込む余地はないし、オーナーの言い分はいささか色あせて見える。 野茂がメジャーに進出して、日本の「野球鎖国」に大きな風穴があいた。頑迷なこの国の球団経営者を置き去りにして、国際化が始まった。才能ある日本人選手はどんどん海外へ進出すべきだろうし、選手は国籍を越えて環流すべきだと思う。 望むのは松井と、そして本当に野球を愛するファンとの「夢」の折半、である。 |