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先日、知り合いの葬儀に参列した。三寒四温の季節の変わり目、火葬場は葬儀が立て込み、喧噪を極めていた。「こりゃ、待たされるなぁ。次の仕事も入っているし困った」。同席した知人は何度も腕時計をのぞいた。 その言葉を聞きながら、ある「野球選手」を思い出した。彼と出会ったのは某球団の入団テスト会場だった。190センチにも届こうか、という大男だったから目にとまった。大学の野球部に所属したものの、そりが合わず中退、テスト入団に希望を託した。バッティングには確かに力感があったが、足が遅く、守れるポジションも限られていた。ただし、スカウトは化けると判断したのだろうか、採用されることになった。野球選手としてではなく、球団職員として、である。「2年間、待ちに待った日が来ました。身分なんか関係ありません」。そう言って目を輝かせた。用具係という役回りだったが、それでもファームの選手に混じって練習を重ねた。 数年後、「コーチに認められました。ずいぶん待たされましたが、今度会うときは本当のプロ野球選手です」と言ってきたときは正直驚いた。しかし、その直後に球団トップが交代し、経営不振を理由に彼は解雇され、ある会社に転職した。風の便りに結婚したことを聞き、ささやかなお祝いを送ったら電話がかかってきた。「かみさんに会ってくださいよ」。長身の彼とは対照的な、小柄な心根の優しい女性だった。「長年待ったかいがあったじゃないか、良い奥さんもらって」と冷やかしたら「へへへ」と照れくさそうに笑った。35歳になっていた。 その彼が急死した。知らせる者があってあわてて駆けつけたのは火葬場、荼毘に付される直前だった。「身体が大きかったからね。棺桶も特注です」。父親が耳元でささやいた。 10基ある火葬場の釜の一番左端が、大型の特別製で普段はほとんど使用されないのだが、この日に限って1組、順番を待っていた。 「少々、お待ちいただくことになります」。火葬場の職員がこう告げたとき、弔問客の間に小さなさざ波が起きた。喪主の奥さんはそのことを感じ取ったのだろう。柩に向かって、そっと話しかけた。あくまで明るく振る舞いながら。 「あんた、(人生の)最後まで待たされるんだね」。 事情を知っている者だけが柩の傍を離れ、青空を見上げてむせんだ。葉桜が照り輝く、晩春の頃だった、と記憶している。 |