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故三遊亭圓生さんの著書「江戸散歩」にこんな言葉がある。「こころのほどに世を経る」――大志を抱き生き続ければ、それなりに道も拓ける。小さな人生にも楽しみはあるし、要は心の持ちようで人の様は変わる。そんな意味だろう。江戸時代も今も人の思いは同じである。 先日、日刊スポーツI記者の結婚式があった。巨人工藤、西武松坂ら現役バリバリの大物選手が何人も駆けつけた。担当記者にしてみれば、日ごろの人脈披露の見せ所である。高砂の回りにかれらが登壇し、次々との祝いの言葉を口にした。すでに実績を残した者、伸び盛りの若手。声に張りがあり、人生の頂点を感じさせる。そんな中で、 「私はダイエーをクビになりました」 と、言ったのは橋本清だった。PL学園から87年、ドラフト1位で巨人入り。解雇されるとテストでダイエーに入団した。切り札のフォークはまだ健在と信じる、当年32歳の青年である。 「クビが決まった時、真っ先に電話をかけてきてくれたのが、I記者でした。今後のことも含め、いろいろ相談に乗ってくれました。野球人生での財産です。これからもよろしく御願いします」。式場は一瞬静まり返り、そして拍手は起きた。 12月のこの時期、野球選手の進路が決まる季節でもある。ドラフトで球界に飛び込む人間がいる一方、ユニフォームを脱ぐ人間もいる。巷の不況は野球界も例外ではなく、次の就職が決まらず、途方にくれる選手は満ちあふれている。各球団が開催した合同入団テストには名選手たちが群がった。 「こころのほどに世を経る」――何もしてあげることは出来ないが、野球界で育んだ仲間を大切にして欲しい。人生はまだ半ばだ。生きようはいくらでもある。 |