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私のデスクにある電話は外線に直結している。読者からの意見、苦情の窓口である。「なんでセ・リーグは勝ち星順位制を採用したんだ」。これが今年の苦情NO.1になっている。巨人が独走している間はまだよかった。負け数がかさみ、どう考えてもヤクルト優位がわかってくると、電話の向こうの声はいささかエキセントリックになってくる。「どうしてヤクルトが優勝するんだ。巨人だってヤクルトと同じくらい勝っているじゃないか! 勝ち星で優勝が決まるんだろ」と、こうなる。 野球好きの父親と、巨人が大好きな小学生の親子がいた。「いた」と書いたのは事情がある。小学生はいつも父親に尋ねた。「だって勝敗表は巨人が1位だよ。だから優勝するんでしょ」。昨年までの勝率順位制とは異なることを何度も説明したが、彼は受け入れなかった。本当は巨人が不利なことを知っていたのかも知れない。負けるなどということを認めたくなかったのだろう。長嶋監督が好きで、松井が好きで、その次に高橋が好きで、心の底から巨人ファンだったから。少年とはそういうものだ。 M・S君が千葉の川でおぼれたのは8月]日だった。必死の捜索で引き揚げられ、治療が施されたが翌^日午前7時m分、息を引き取った。9歳Yヶ月。柩(ひつぎ)は巨人グッズで埋った。所属していた少年野球のユニホームが死装束。チームメイトは出棺の間際、「がんばれ、M!」とエールを送った。東京ドームで買ってもらった「松井ノート」には父に連れていってもらった3度の観戦記録が刻明に残されていた。「どうやったら、松井選手のサインがもらえるのだろう」。 M君の死後、父親は長嶋監督、松井、高橋選手に宛てて手紙を書いた。仏前にサインを飾ってやりたかった。そして、こう文面を締めくくった。 「それでも巨人は勝つのでしょうね」、と。 |